2011年度政令市議会研究会(視察を終えて)

稲葉副市長は挨拶の中で
「政令市がこれほどの広範囲にわたる大災害を受けた例はない。
 仙台市では市内の東部側(太平洋側)が津波被害、西側(丘陵部)が宅地被害。
 今年を「復興のキックオフ」と位置付け、2012年度の市役所組織改編で「震災復興本部」を発展的に解消し、150人規模の「復興事業局」を新設する、そして復興のノウハウを全国にフィードバックしていく。
 仙台を復旧復興させるとともに東北地方の政令指定市としての役目は大きい。」
と話された。
今回の視察で学んだものを福岡の安心安全なまちづくりに活かしていきたい。


〈津波被災地移転候補先 次世代型都市 スマートシティ〉
 ・津波被災地移転の候補先になっている仙台東部道路西側地区(この道路で津波が止まった)では、環境負荷の小さい次世代型スマートシティの実現に向けた検討が始まっている。
 メガソーラーやがれきの木質バイオマス等を活用し、この地区で建設する病院や学校等の公的施設等に電気を供給する構想である。
 震災前からこの構想は検討されていたが、沿岸部の津波被災地の移転候補先にもなり、災害に強いまちづくりを目指す構想が一気に具体化したという。
 太陽光等再生可能エネルギーを活用するスマートシティ構想は東北の被災地では検討が広がっている。
 福岡市においても人工島(アイランドシティ)の公的施設や未利用地へのメガソーラー設置などが期待されており大いに参考になる構想である。
〈住まいの安全 津波被害地域〉
 ・1日目に視察した若林地区では10メートルを超える津波により、706人の方が亡くなり、今尚24人が行方不明となっている。
 10メートルを超える津波は青々とした黒松林をなぎ倒し、多くの農家を押し流し、「ささにしき」や「ひとめぼれ」を生産していた広大な田園を無残な景色に変えている。
 ガレキ等の処理が終了した後、この地域は適正に処理したガレキ等も活用して海岸沿いを走る県道をかさ上げし、海岸防災林の整備など津波に対する様々な減災対策が講じられるという。
 また、震災前は市民の憩いの場として市民から親しまれていた海岸は、多くの市民が再び海や自然と触れ合うことのできる魅力的な交流ゾーンとして、「避難の丘」を造成するとともに、サッカー場や冒険広場など「美しい海辺を復元する」海辺の交流再生プロジェクトが計画されている。
 美しい海浜景観の再生と津波防災のとりくみを期待したい。
 ・太平洋沿岸の浸水区域全域における浸水深と被災状況の関係をみると、浸水深が2メートルを境に被災度合いの傾向が大きく異なっている。
 2メートル以上では全壊が70%に対し2メートル未満では約30%までに低減している。この2メートルという海抜高度は今後の災害に強い街づくりの参考になる数字である。
〈仮設住宅〉
 ・津波による浸水で仮設住宅の建設用地が不足したため、仙台市をはじめ多くの自治体が民間賃貸住宅を借り上げて仮設住宅とする「みなし仮設住宅」が広く活用されている。
 仙台市内でも6500世帯に上っている。阪神淡路大震災をきっかけに始まった制度で迅速に入居できるほか、コストも従来型のプレハブ建設より安価に抑えられる等のメリットがある。
 この制度は1997年に厚労省が定めた応急救助の指針に盛り込まれ制度化されている。
 今回の大震災では資材不足などで仮設住宅の建設が難航しているため、昨年4月末、被災者が自力で借りた賃貸住宅を自治体が借り換えることも認めたため「みなし仮設」の入居者が急増したという。
 しかし、一方で、「みなし仮設」入居者は点在するので、支援や情報が行き届かない、入居した団地やアパートに知り合いがいなく孤立化する等の課題がある。
 公有地が少なくプレハブ用地の確保が厳しく自治体のことを考慮するとこの制度は有効だが、契約手続きの際、住所などの個人情報を支援に使えるよう同意をとることや入居者が孤立化しないように巡回相談の体制を強化すること、また入居期間の延長など、今後、この制度の改善が図られることが求められる。
〈避難所〉
 ・大震災発生後の翌日には、仙台市民の約1/10にあたる10万5千人が避難所に駆け込んでいる。
 震災前は仙台市には小中学校を中心に194か所の避難所が指定されていましたが、壊れた避難所も多く、未指定のコニュニティセンターや児童館を含め最大288か所の避難所が開設された。
 しかし、未指定のこれらの施設は備蓄物資もなく、食料や水などが届かなかった。
 ・燃料の不足(重油、ガソリン、軽油、灯油)により 非常用発電や緊急車両、公用車、作業車の燃料、避難所の暖房のための燃料が払底し、電話(固定、携帯)、防災無線、衛星通信のいずれも通じず、迅速な対応を阻害した要因になったと言われている。
 今後、避難所の設置や備蓄物資の検討の中に際に、備蓄燃料やトランシーバーを含む連絡手段の再検討が求められる。
 ・避難所となった小中学校ではトイレが使えず、仮設トイレが数台設置されたがいずれも段差がある和式タイプで高齢者にとってはつらいものになっていた。
 また、近隣の自宅避難者も学校の仮設トイレを使用したこともあり、避難者の数の割には数が少なすぎる。
 トイレは避難所にとって重要な課題であり改善策の検討が必要である。