過ちは繰り返しませぬから

8月9日は、長崎原爆の日。原水爆禁止長崎大会は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、オンライン開催となりましたが、被爆地で核兵器廃絶の思いを共有したいとの思いで長崎に行き、平和公園や原爆資料館、原爆落下中心地(松山公園)等を巡りました。

平和記念式典は、新型コロナウイルス感染拡大防止のために一般参列ができなかったため、原爆資料館を見学、小学校教員時、修学旅行の引率や教職員の仲間らと何度も来ていますが、キノコ雲の下の悲惨な状況に怒りがこみ上げてきます。また、広島や長崎への原爆投下の経緯や現在の核兵器の現状、核廃絶へ運動の歩み等が紹介されています。

原爆投下の経緯に関し、アメリカの第1回原爆投下目標検討委員会が、広島、長崎をはじめ、福岡等17の都市を投下目標に上げていたことがわかります。広島・長崎の被爆の現状を自分が住むまちに置き換えて想像し、核廃絶の声を大きくしなければと考える機会となりえる展示物です。

平和公園での祈念式典で、田上市長は、核兵器禁止条約への署名と批准を政府に強く要請するとともに、国会議員にも呼びかけました。国連で核兵器禁止条約が採択されて3年余り、核廃絶キャンペーン組織「ICAN(アイキャン)」によると、すでに44か国が批准し、条約発効の条件50か国に達しようとしています。国内では、448の地方議会が政府に参加を求める意見書を採択、福岡市議会も昨年9月議会で意見書が賛成多数で採択されました。

アメリカをはじめ核保有国は、条約に反対し、使える核とされる小型核を配備するなど緊張を高めています。日本政府は「核保有国と非保有国との橋渡しに努める」と強調していますが、ほとんど成果が上がっていません。

国連事務次長の中満泉さんは、広島市で行われた討論会で、「日本政府は核兵器禁止条約に扉を閉ざさないでほしい」と述べ、条約に関わる議論への参加を促しています。

私たちは、今、大量の核兵器に加え地球温暖化に起因する異常気象、そして新型コロナウイルス感染拡大に怯えています。人間が造り出した核兵器は今を生きる私たちが将来の子どもたちへのプレゼントとして、政治判断で無くすことができます。広島平和記念公園の碑文には「安らかに眠ってください、過ちは繰返しませぬから」とあります。唯一の戦争被爆国として、核兵器禁止条約への署名と批准を行い、核廃絶をリードすべきです。それをしないことが、過ちではないでしょうか。

 敗戦(終戦)75年、被爆者が高齢となり、戦争体験や被爆体験の継承が新たな課題となっています。政府や自治体は、資料館の整備とともに、映像記録の保存や戦争・被爆体験伝承者の養成等を進めるべきです。